研修プログラム

研修プログラムProgram


2.専門研修の目標

[1] 専門研修後の成果

 専門研修修了後の産婦人科専門医は、生殖・内分泌領域、婦人科腫瘍領域、周産期領域、女性のヘルスケア領域の4領域にわたり、十分な知識・技能を持ち、標準的な医療の提供を行う。また、産婦人科専門医は必要に応じて産婦人科領域以外の専門医への紹介・転送の判断を適切に行い、産婦人科領域以外の医師からの相談に的確に応えることのできる能力を備える。産婦人科専門医はメディカルスタッフの意見を尊重し、患者から信頼され、地域医療を守る医師である。
 獨協医科大学病院産婦人科専門研修施設群(以下、獨協医大産婦人科施設群)での研修終了後はその成果として、主として栃木県の医療機関において産婦人科医療を中心的に支える役割を担い、もし本人の希望により本施設群以外(県外を含め)での就業を希望する場合にも、いずれの医療機関でも不安なく産婦人科診療にあたる実力を獲得している事を要する。また、希望者はSubspecialty領域専門医の研修や大学院などでの研究を開始する準備が整っている事を本施設群での研修が果たすべき成果である。

[2] 到達目標(修得すべき知識・技能・態度など)

i 専門知識

 資料1「産婦人科専門研修カリキュラム」参照
 獨協医大産婦人科施設群専門研修では、知識を単に暗記するだけではなく、知識を駆使して一人一人の患者の全身状態、社会的特性に配慮しそれぞれに最適な医療を提供する計画を立て実行する能力の修得をもって目標への到達とする。

ii 専門技能(診察、検査、診断、処置、手術など)

 資料1「産婦人科専門研修カリキュラム」参照
 獨協医大産婦人科施設群専門研修では、本カリキュラムの診断・治療技能修得は最低限必要なものであり、修得するまでの最短期間は3年間(基幹施設での6ヶ月以上の研修を含む)であるが、修得が不十分な場合、修得できるまで研修期間を1年単位で延長する。一方でカリキュラムの技術を修得したと認められた専攻医には積極的にSubspecialty領域専門医取得に向けた技能教育を開始し、また大学院進学希望者には臨床研修と平行して研究の下準備を開始させる。

iii 学問的姿勢

 医学・医療の進歩に遅れることなく、常に研鑽、自己学習する。患者の日常的診療から浮かび上がるクリニカルクエスチョンを日々の学習により解決し、今日のエビデンスでは解決し得ない問題は臨床研究に自ら参加、もしくは企画する事で解決しようとする姿勢を身につける。学会に積極的に参加し、基礎的あるいは臨床的研究成果を発表する。得られた成果は論文として発表して、公に広めると共に批評を受ける姿勢を身につける。
 獨協医大産婦人科施設群は多くの多施設共同臨床研究に参加しており、研修の一環として臨床試験のプロトコールに則った診療を行う事で、専門医取得後に自らが臨床試験を主体的に実施する能力を養う。基幹病院、連携病院、連携施設(地域医療)、連携施設(地域医療-生殖)のいずれにおいても学会に出席し、自らも発表する機会を積極的に与える。

iv 医師としての倫理性、社会性など

1) 医師としての責務を自律的に果たし信頼されること(プロフェッショナリズム)
 医療専門家である医師と患者を含む社会との契約を十分に理解し、患者、家族から信頼される知識・技能および態度を身につける。
 指導医である主治医とともに患者・家族への診療に関する説明に参加し、研修終了予定の年度においては指導医のバックアップのもと自らが患者に説明するスキルを身につける。
2) 患者中心の医療を実践し、医の倫理・医療安全に配慮すること
 患者の社会的・遺伝学的背景もふまえ患者ごとに的確な医療を実践できる。医療安全の重要性を理解し事故防止、事故後の対応がマニュアルに沿って実践できる。
 インシデント、オカレンスレポートの意義を理解し、これを積極的に活用する。患者に何らかの危険が生じた場合にはその経験と反省を共有し次の機会には安全な医療を提供できるようになる。
3) 臨床の現場から学ぶ態度を修得すること
 臨床の現場から学び続けることの重要性を認識し、その方法を身につける。
 医師は臨床の現場から学ぶ事が多く、それは尽きる事がない事を自覚するようになる。「患者から学ぶ」を言葉のみならず、常に意識し感謝の念を持って実践できるようになる。特に獨協医大産婦人科施設群の地域連携施設での研修では、地域の実情に合わせた医療の提供について患者や地域社会から学び、実践できるようになる。
4) チーム医療の一員として行動すること
 チーム医療の必要性を理解しチームのリーダーとして活動できる。的確なコンサルテーションができる。他のメディカルスタッフと協調して診療にあたることができる。
 建設的な発言をためらわずにする事ができるとともに、他のスタッフの意見を受け入れ、議論を通してより良い医療をチームとして提供できる。
5) 後輩医師に教育・指導を行うこと
 自らの診療技術、態度が後輩の模範となり、また達成度評価が実践できる。
 獨協医大産婦人科施設群での研修中は能力に応じて学生実習の一端も荷なう。教える事が学ぶ事につながる経験を通し、先輩からだけではなく後輩からも常に学ぶ姿勢を身につける。
6) 保健医療や主たる医療法規を理解し、遵守すること
 健康保険制度を理解し保健医療をメディカルスタッフと協調し実践する。医師法・医療法(母体保護法[人工妊娠中絶、不妊手術])健康保険法、国民健康保険法、老人保健法を理解する。診断書、証明書が記載できる(妊娠中絶届出を含む)。

[3] 経験目標(種類、内容、経験数、要求レベル、学習法および評価法等)

i経験すべき疾患・病態

 資料1「産婦人科専門研修カリキュラム」参照
 獨協医大産婦人科施設群専門研修では、基幹施設で経験しにくい疾患(性病、性器脱など)については主に地域医療を支える連携医療機関で十分に経験できるよう、ローテート先を考慮する。

ii経験すべき診察・検査等

 資料1「産婦人科専門研修カリキュラム」参照
 獨協医大産婦人科施設群では経験すべき診察・検査等は十分に経験できる。

iii 経験すべき手術・処置等

 資料2「修了要件」参照
 獨協医大産婦人科施設群専門研修では修了要件以上の症例を3年間で経験できる。ただし、経験数が多ければ技能を修得できる訳ではなく、年数をかけてでも技能を修得する事を目標とする。一方で、3年を待たずして技能を取得できたと判断する場合には、より高度な技能の経験を開始する。

iv地域医療の経験(病診・病病連携、地域包括ケア、在宅医療など)

・地域医療の経験のために、産婦人科専門研修制度の他の専門研修プログラムも含め基幹施設となっておらずかつ東京23区および政令指定都市以外にある連携施設または連携施設(地域医療)で1か月以上の研修を行うことを必須とする。ただし、連携施設(地域医療)、連携施設(地域医療-生殖)での研修は通算12か月以内(研修期間が3年を超える場合には延長期間の研修を当該連携施設で行うことは可とする)とし、その場合、専攻医の研修指導体制を明確にし、基幹施設や他の連携施設から指導や評価を行う担当指導医を決める。担当指導医は少なくとも1-2か月に1回はその研修状況を確認し、専攻医およびその施設の専門医を指導する。なお、連携施設(地域医療-生殖)での研修は、専門研修指導医のいない施設での研修12か月以内に含める。
・獨協医大学産婦人科施設群に属する連携施設は、栃木県、埼玉県が定める医師不足地域に属する。このため地域医療特有の産婦人科診療を経験し、地域の医療資源や救急体制について把握し、地域の特性に応じた病診連携、病病連携のあり方について理解して実践できる。
・地域医療においては市町村の行政者との連携も緊密で、妊婦の保健指導や相談、支援に関与したり、婦人科がん患者の緩和ケアなど、ADLの低下した患者に対して、開業医との連携で在宅医療の立案に関与できる。また、地域から高度な医療を受けるため獨協医科大学病院で治療を受けていたがん患者が、best supportive careを要する状態に至った際に、その患者の居住区を勘案して、地域の緩和ケア専門施設などを活用した医療を立案することができるようになる。
 獨協医大産婦人科施設群は人口に比して産婦人科医が少ない連携施設を擁する。これらの連携施設には地域医療が果たすべき役割があり、地域医療の特性を学べる。また、多くの人が働く大学病院とは異なり、比較的少人数で構成される医療施設には独特の人間関係がある。患者の特性も地域により異なる部分がある。所に応じたスタッフや患者との人間関係の形成を通して、多様な地域、人との適切な関わり方を身につける。
*註1)連携施設(地域医療):専門研修指導医が在籍していないが専門医が常勤として在籍しており、基幹施設または他の連携施設の指導医による適切な指導のもとで、産婦人科に関わる地域医療研修を行うことができる施設。産婦人科専門研修制度の他の専門研修プログラムも含め基幹施設となっておらず、かつ政令指定都市(東京23区を含む)以外にある施設。
*註2)専門研修指導医が常勤として在籍しておらず、かつ、産婦人科に関わる必須の地域医療研修を行うことはできないが、専門医が常勤として在籍しており、基幹施設または他の連携施設の指導医による適切な指導のもとで、地域における生殖補助医療の研修を行うことができる施設。

v 学術活動

 以下の2点が修了要件に含まれている。
1) 日本産科婦人科学会学術講演会などの産婦人科関連の学会・研究会で筆頭者として1回以上発表していること。
2) 筆頭著者として論文1編以上発表していること。(註1)
註1)産婦人科関連の内容の論文で、原著・総説・症例報告のいずれでもよいが、抄録、会議録、書籍などの分担執筆は不可である。査読制(編集者による校正を含む)を敷いている雑誌であること。査読制が敷かれていれば商業誌でも可であるが院内雑誌は不可である。ただし医学中央雑誌またはMEDLINEに収載されており、かつ査読制が敷かれている院内雑誌は可とする。
 獨協医大産婦人科施設群では基幹施設には研修中は1回以上の産婦人科関連学会での学会発表を専攻医に行わせる事を義務づける。さらに短期間(おおむね6ヶ月以内)の連携施設での研修を除き、連携施設においても1回以上の学会発表の機会を専攻医に与える事を努力目標とし、この目標を達成した連携施設へ専攻医の研修を優先的に依頼する。論文は専攻医一人一人に研修開始から3ヶ月以内に担当指導医1人をつけ、責任を持って研修修了までに作成させる。学会発表も論文作成も専門医が自ら努力し行うべき職責であることを指導する。

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